思考の整理学 ~1983年に提唱なのになんと目新しい~ パート2 思考の醗酵?

【今回ご紹介の本】外山滋比古著 「思考の整理学」 筑摩書房

 前回に引き続き、外山滋比古先生の思考の整理学です。今回はセレンディピティに関する思考法を紹介です。今回で本書の紹介は終わります。ほかにもいろいろ、「なるほど」と思うことが満載なので、ぜひご一読ください。

【醗酵】
 自分の”オリジナル”の何かを作りたいと望んでいる人は意外と多いのではないでしょうか?例えば論文を書くにしても、だれもやっていない実験系を立ち上げて、それを実証しなくては書けません。こんな時に、いいアイディアを思いつかなくてはと躍起になってもいいものは生まれないと外山先生は述べております。
 いいアイディアを思いつくには主に三上(馬上、枕上、厠上)において思いつくといわれており、現代においてはそれぞれ通勤時間、起床から起き上がりしたくするまでの時間、トイレの時間がそれに相当するそうです。これらの時間は、人間がリラックスをしている時であり、例えばアルキメデスの入浴中に体積の測定法を思いついたというのも有名な話です。つまり、
 1. 脳がリラックスしているときに
 2. 今までの蓄積された知識をもとに
 3. それらの知識の組み合わせから
 4. 新しいアイディアが創出される
というわけです。外山先生はこれを知識の醗酵と称しており、いくら新しいことを思いつこうとしても、そこに焦点を当ててしまっては閃きはないとしています。一見役に立たないかもしれない知識でも、吸収しておいておく、それがいつの日か、様々吸収した知識と組み合わさり、新しい、いいアイディアとなると述べております。
 今日たまたま調べたときにハッとしたのですが、PCR法(ポリメラーゼ連鎖反応)というDNAの特定の差を増殖させる方法も、発明者のキャリーマリス博士が彼女とドライブ中に思い付いた(wikipediaより)ということで、これもまさに馬上の好例でしょう。

【触媒】
 そんな知識の融合に際し、自分を前面に出すのではなく、まるで触媒のように自らの痕跡を消してしまうくらい謙虚になるということも大切であるとされています。触媒は化学反応の活性化エネルギーを下げる役割を果たし、しかし反応の終状態と始状態で変化をしない物質です。思考の化学反応でいえば、「ある知識」と「ある知識」を組み合わせて新しいものを作り上げるときに、それらを組み合わせる自分自身は我を出さないということが触媒としてふるまうことだと述べます。つまり、自分の好みや偏見を持った状態で知識を融合させるのではなく、客観的で冷静な観点から知識の融合をする必要があるとしています。

【セレンディピティ】
 上記のように知識を組み合わせていいアイディアを作ろうとするとき、色々な情報を手当たり次第に、しかも目的をもって集めようとするでしょう。しかしながら、その過程で余計なことにふっと興味がわいてしまったり、問題の解決のために調べていたことが、別の解決方法につながったりすることもあると思います。これをセレンディピティと言い、最近日常でも目にする語句になったと思います。このセレンディピティは「セイロンの三王子」という童話がもとになっているようで、童話の中で王子が探し物を探しに方々探し回るにもかかわらず、一向に探し物は見つけられず、代わりに予期せぬ大切なものを見つけるという内容だそうです。当時のセイロン島をセレンディップと呼んでいたらしく、セイロン島的なという意味でセレンディピティと名付けられたとのことです。
 つまり、目的意識を持ちつつも、近道ばかりを探すのではなく、色々と包括的に勉強することも大切であるということだと思います。

【まとめ】
 果報は寝て待てというように、好き嫌いせずに色々な情報、勉強をして、脳にとっかかり(フックのようなもの)を作っておくということが非常に大事であり、その過程で思いもよらない貴重な発見やひらめきが隠されているということでした。フックのようなものをたくさん作るという内容は、 藤原和博著 「本を読むものだけが手にするもの」  にも書かれておりました。また、すぐに成果を求めるという習慣に関しての問題点は、 エイミー・モーリン著 長澤あかね訳「メンタルが強い人がやめた13の習慣」 にも記載されております。こちらもご一緒にどうぞ。
 外山先生は、自分の知識を寝かせずにすぐに結果を求める様子を「見つめる鍋は煮えない」という諺と重ね合わせて、果報は寝て待つ習慣を推奨しておられました。

【感想】
 哲学を持つ博士の話はこれほどに面白いのか、と感銘を受け、一気に読み進めてしまいました。非常に読みごたえがあり、さらに思考のまとめ方、忘却を恐れずに様々な知識を意欲的に吸収する姿勢、そしてそれらの知識をいかに定着させ、アウトプットさせやすくできるのかという具体的な方法論も記載されておりました。興味のある方はぜひご一読下さい。次回も面白い書籍を紹介してまいりますので是非訪問お願いいたします。一緒に勉強していきましょう。