人生100年戦略 健康資産への投資 うつ病の対処方法~運動療法~

 前回、うつ病の対処に関する考え方を述べてまいりましたが、その続きとなります。前回は厚生労働省、NHSの発表しているうつ病の定義や、予防対策に関して述べてまいりました。
 今回の投稿は、その各論的な紹介として、論文から調べたうつ病の対処法方に関して書いていきたいと思います。大前提として、専門家の診断を受けるというポイントは変わりません。メンタルに不調がある場合は、専門機関を受診し、お医者さんと相談しながら下記紹介する手段をサプリメント的に実施すると良いかと思われます
 また、メンタルに不調がない場合でも、今回紹介する「運動療法」は「身体的」にも「精神的」にも有用とされていますので、積極的に生活に取り入れることで、循環器系の疾病および糖尿病の予防などに有効であるとされています。
 論文を読む限りでは、運動療法はいいことずくめです。試してみる価値は非常に高いと思われます

目次

  1. 2015年にベルギーのKU Leuvenの研究チームが発表した運動療法に関するメタ分析研究
  2. 本論文の結論(ここだけ読めば内容が分かります)
  3. 有酸素?筋トレ?より有効な運動と年齢層
  4. うつ病が心臓病まで引き起こす!? うつ病とメタボリックシンドロームの密接な関係
  5. 運動療法でうつ病改善のみならず身体も健康になる
  6. 生活習慣もうつ病に関係する
  7. 始める場合は低強度の運動から
  8. 運動を始めるにあたって

2015年にベルギーのKU Leuvenの研究チームが発表した運動療法に関するメタ分析研究

J. Kanapen et al., Disability and Rehabilitation, “Exercise therapy improves both mental and physical health in patients with major depression”, 2015, 37, 1490-5
 本論文はベルギーのKU Leuvenの研究チームが発表したもので、メタ分析(複数の研究を調べて分析、調査するタイプ)の論文であり、いくつかの運動療法に関する研究をまとめ、運動療法がうつ病に効果的か否かを明らかとしています。ですので、様々な病状かつ年齢層の患者に対して様々な運動手法を用いて運動療法を施した場合に何が見られたのかを述べています。論文の内容を大雑把にまとめると下記、結論のようになっています。

本論文の結論(ここだけ読めば内容が分かります)

 運動によってうつ病の改善効果が得られたそうです。本文書のポイントは以下の通りです。
・うつ病は身体的な疾患の合併症になりうる病気で、特に心臓病、二型糖尿病(後天的に起こる糖尿病)、メタボリックシンドロームなどによって引き起こされることがある。運動によって上記身体的な疾病の予防、改善も期待できる。
・軽度、中程度のうつ病に対して、運動療法は従来の「抗うつ薬治療」や「精神療法(カウンセリングセラピーなど)」と同程度の効果があった。
・運動療法によって身体的な健康、ボディイメージ(自分の体に対する心象)、ストレスへの対処能力、生活の質が向上した。そして高齢者は介助に頼らず日常の活動ができるようになった。
・運動をする場合は筋トレよりも有酸素運動が効果的とされている。

有酸素?筋トレ?より有効な運動と年齢層

 論文によると、有酸素運動と筋力トレーニングの二種類の運動のうち、有酸素運動のほうがよりうつ病の予防、改善に効果があるそうです。さらに、60歳以上のうつ病患者に対してより高い治療効果をもたらしたそうです。この事実はさらに、日常生活における種々の活動を一人で行うために必要な体力にもつながるため、特に高齢者には一石二鳥の効果がもたらされることを示しています。うつ病ほどではないけど、気分が落ち込んでいる時は、前回記載したように、週に二時間半を目安に有酸素運動をすると良いかと思います。

うつ病が心臓病まで引き起こす!? うつ病とメタボリックシンドロームの密接な関係

 うつ病の患者は心臓病のリスクが2倍になるそうです。逆に、心臓病を発病してからうつ病になる場合もあるそうです(心臓病後うつ病になると、心臓病の予後が悪くなるそうです)。つまり、うつ病と心臓病は互いに関係がある可能性が考えられます。
 さらにメタボリックシンドロームとうつ病との間にも相互関係があるそうです。メタボリックシンドローム(肥満、高血圧、高脂血症、高血糖)の状態は、うつ病の危険性も高める因子になりうるということがこの論文で述べられています。興味深いことに、うつ病患者は高い確率でメタボリックシンドロームにかかっているとされています。5531人のうつ病患者を対象にした調査では、そのうち30.5%がメタボリックシンドロームであったそうで、これはうつ病を持たない人たちと比べて1.5倍の確率だそうです。
 これとは逆に、メタボリックシンドロームそれ自体がうつ病の発症リスクを上げているというのです(オッズ比 = 2.18;つまりメタボじゃない人と比べてメタボの人が二倍以上うつ発症の危険性を有しているということ)。
 以上をまとめると、「うつ病」「心臓病」「メタボリックシンドローム」のうちのいずれかがきっかけになって、最終的にこれらすべてが併発するリスクがあるということを示しています。

運動療法でうつ病改善のみならず身体も健康になる

 「うつ病だからメタボ」になる、「メタボだからうつ病になる」という卵が先か鶏が先かのような話ですが、どちらが先でも結果としては「うつ病⇄メタボ⇄心臓病」という形で、心臓病などの身体的な疾患まで誘発する可能性があるということを知っておく必要があると考えます。このような悪循環を持つうつ病は、メタボリックうつ病と定義されているようです。この問題を根本から絶つにはやはり「運動」でうつ病の予防改善、そして副次的な効果としてメタボリックシンドロームの改善まで図れば、「うつ病⇄メタボ⇄心臓病」という負の連鎖を止められることが期待できます。

生活習慣もうつ病に関係する

 喫煙習慣、良くない食生活をする人達はうつ病の有病率が高いそうです。特に肥満度が高いほどうつ病のリスクが高くなりやすいとされています。また、慢性的なストレス、社会的影響、うつ病以外の病気からくる影響、慢性通、飲酒、薬剤の使用、浴びる日光の量などがうつ病と関連するともいわれています。

始める場合は低強度の運動から

 うつ病の人は心臓病などの生活習慣病を抱えている可能性があるため、専門家同伴で運動療法を行い、息切れ、めまい、発汗、呼吸の速度などを確認してもらいながら運動をするべきだとされています。最初は低強度のウォーキングなどから始め、段階的に強度を上げていくことが推奨されています
 精神が少し憂鬱で、予防のために運動をしたいという人は、週に二時間半を目安に早歩きやダンス、犬の散歩やガーデニングなど、前回に記載した運動から始めてみると良いかと思います。

運動を始めるにあたって

 論文には運動療法を続けるためのポイントが記載されていました。個人で実施しやすそうなものをピックアップして少しアレンジして記載してます。
・自分の好きな運動を選ぶ
・長期的に壮大な目標を立てずに短期的に達成できるような目標を立てて運動を実施する
・運動を続けていることを称賛し、励ます(運動療法を指導する人向けに書かれている文言ですので、この場合自画自賛でもよいかと思います)

 以上、うつ病の運動療法に関する論文を読んだ概要でした。気分が憂鬱だと感じている時は、運動をすると気分が良くなり、それがうつ病の予防につながるかもしれません。運動をすることで、うつ病の改善がみられるということは、専門の論文からも証明されておりますので、運動を生活に取り入れてみてはいかがでしょうか?