バビロンの大富豪 ~古代から変わらない資産形成、資産運用のノウハウ~

今回ご紹介の本『バビロンの大富豪 「繁栄と富と幸福」はいかにして築かれるのか』ジョージ・S・クレイソン 著 大島豊 訳
本書はAUDIBLEで聞きました(正確には読書による書評ではありませんが内容をまとめます)。

こんな人にオススメ
・資産運用を始めるにあたり、どう進めるべきがわからない
・今も昔も変わらない資産運用のゴールデンスタンダートを知りたい
・楽しみながら金融リテラシーを学びたい
オススメ度 95/100

【本書の説明と流れ ~概論~】

 アルカドという古代バビロンの大富豪の教えをもとに、その教えがどのように生かされるのかを9話の物語形式で述べられています。本書の中における教えは以下の5つの黄金法則に集約されます。
1. 最低でも収入の1/10を使わず貯める
2. 貯めたお金を賢く投資し、お金でお金を増やす
3. 投資をする際は、投資に長けた人、もしくは投資対象となるビジネスの専門家の忠告を聞く
4. 自分が詳しくない分野、ビジネスに長けた人が認めない分野での商売は失敗する
5. あり得ないような莫大なリターン、詐欺師の誘い、自らの夢に目がくらむと商売は失敗する

 全編で富豪と貧しい農民との対話などが繰り広げられ、その時々で上記で述べる5つの黄金法則が役に立つといった内容が物語に出てきます。驚くべきことに、これは古代のバビロニア王国の遺跡の粘土板に刻まれた内容だったそうです。面白かった論述としては、自ら稼いだお金は自分のためにせっせと働いてくれる奴隷のような存在(古代バビロンでは奴隷という存在がかなり一般的であり、このような表現がある)であり、その奴隷たちは増やせば増やすほどまるで家畜のごとく、子を産み、孫を持ち、大きくなっていくという部分です。
 上記のような、資産が雪だるま式に増えていくという考えは「超訳 資本論」や「いま君に伝えたいお金の話」などでも異口同音に論述されています。つまり、お金がお金を呼び、資本自身がまるで意志を持つように大きくなる性質を持っていると考えることもできます。
 このように、今も昔もビジネスの形こそ変われ、資産の形成と運用に関しては不変のものであるということが強く示唆されます。

最低でも毎月収入の1/10を使わずにとっておく

 若き日の大富豪アルカドは、貧しい粘土板彫り(今でいうと手写しの印刷業)を行っておりました。真面目に実直に仕事をこなすにも関わらず、まったく生活はよくならず、その状況に不満をいただいていたころ、富豪が仕事の依頼に来ます。報酬の代わりにアルカドは金持ちになる極意を教わります。
 富豪が報酬代わりに伝えた極意は少なくとも収入の1/10を貯めることでした。アルカドがその教えを守ると、今までやっと生活をしていたと思っていたにもかかわらず、収入の9/10のお金で十分に生活をすることができるということでした。アルカドはこのことから以下のことを学びます。
・欲望は自分の収入のすべてを使い切るまで発散し続ける
 つまり、生活費から一定の金額を貯蓄に回したうえで生活をしなくては、その予算を使い切るまで必要のないことにお金を使ってしまうということです。お金が無ければ無いなりに、気を付けて節約はできるということです。私も学生時代に少ない収入の中でも生活できていたことを考えると、この話は普遍的で誰にでも共通するなと感じます。

貯めたお金は使ってしまわず”賢く”投資する

 アルカドは富豪が言うとおりに収入の1/10を貯め続けます。そして一年間頑張ってお金を貯めたころ、彼はレンガ職人の友人にお金を投資し、宝石売買のビジネスに乗り出します。その事実を知った富豪はため息混じりにこういいます。「君は星座を教えて貰うためにパン屋に行くのかね?」富豪の言い分は、餅は餅屋に任せよということで、宝石のビジネスを始めるのであれば宝石商に相談するべきだったというのです。レンガ職人が宝石の品定めをできるはずもなく、あえなくビジネスは失敗に終わります。アルカドは以下のことを学びます。
・自らのお金を使ってビジネスを始める際には、その専門家に相談をする
 この話は現代にも通用する話で、何か情報を得るならばその道の専門家にアドバイスをもらうなど工夫をしなくてはならないという点は、今も昔も普遍的なことなのだと感じます。
 アルカドは富豪の教えを守り、今度こそビジネスを成功させます。しかし、アルカドは自分の資産が資産を産むことに安心したのか、そこから得られた利益を物欲を満たすために散財しようとします。これを富豪が次のようにいさめます。「せっかく資産が稼いだお金を君は食べてしまおうというのかね?」資産がもたらす利益は、また次の投資に回すことでお金の大群を産み、その大群がまるで家畜かのようにまた新しいお金の子供を産むというのです。アルカドはここから次の教訓を学びます。
・投資で得た利益をまた新しい投資に回すことでお金を稼ぐ資産の大群を作る
 この考え方は、資本論にも登場する資産の増大のルールにも共通します。そのルールは「お金→商品→お金」というルートをたどることで、資産はその額を増やすというのです。これは株式投資を想像すればわかりやすいですが、手元資金100万円(お金)で株式を100万円分(商品)買ったとします。この株価が上がり、110万円(お金)で売却した場合、資産の保有者は何の労働もせずに10万円分の利益を得たということになります(もちろん損をする場合もありますが、資本増大の原則を説明するために便宜上得をした場合のお話をしています)。このように「お金→商品→お金」の流れを絶やさないようにするためには、「お金→商品」で終わるような浪費を避けなくてはなりません。

投資をする際は、投資に長けた人、もしくは投資対象となるビジネスの専門家の忠告を聞く

 登場人物は変わり、バビロンの槍職人ロダンを主人公としたお話から表題の教訓を学びます。彼は王から突如として多額の報酬をもらったものの、使い方を考えあぐね、金貸し業を営むメイソンに相談に行きます。ロダンは妹から融資を頼まれていました。しかしながらそのお金を貸すかどうかを決定できず、金貸しのメイソンに相談をしたのです。メイソンは次のように言います。「金を貸す対象の人間が、やろうとする商売に詳しい人間で、確実に成すことが出来そうか?」この問にロダンは首を振ります。そしてロダンは融資を断る決断をするのです。ロダンの行動から次の教訓が学べます。
・投資をする際は、投資に長けた人の忠告を聞く
 ロダンの行動は結果として正解と考えられるものでした。勝算の少ないビジネスに対して投資をするのは、投資資金をすべて失う可能性があるためです。「どの程度の確率で勝算があるか」「成功するとどれだけリターンを得られるのか」を掛け合わせて「期待値」といいます。この期待値が大きい場合のみ投資に踏み切る必要があるのです。この考えは「いま君に伝えたいお金の話」で村上氏が語るところです。

あり得ないような莫大なリターン、詐欺師の誘い、自らの夢に目がくらむと商売は失敗する

 登場人物はまた変わり、裕福なラクダ商人ダバシアと貧しいタルカドの会話に移ります。タルカドはダバシアに借金があり、返済を催促されます。しかし手持ち資金が無く、返済が出来ずにいました。そしてタルカドは返済をする気力すらも失っていることをダバシアは見抜きます。そんなタルカドの状況を打開するきっかけをとダバシアは自らの境遇を打ち明けます。
 実はこの裕福なダバシアは、昔奴隷として働いていたというのです。奴隷になるまでは次の経緯をたどります。
身の丈に合わない豊かな生活を夢見た信用買い(借金)で欲しいものを手に入れた返済が滞り首が回らない状態に陥ったやけになり盗賊として悪事を働いた囚われの身となった
 ダバシアは囚われの身となって初めて自分の愚かさに気づきます。そして奴隷の保有者の夫人の機転により自由の身となったダバシアは改心し、今まで借りていた借金を黄金法則(1/10の貯金、賢い投資)に則り返済し、有数の富豪になったのでした。これを聞いたタルカドもまた、心を入れ替え必死に働き借金の返済を決意するのです。この話から次の教訓が分かります。
・莫大なリターンや夢のような生活に目がくらむと商売は失敗する。または破滅する
 ダバシアの行動から、まじめに働く前の身の丈に合わない夢を追いかける行為は、今の社会にもみられる行動であり、借金をすること、返済のめどが立たない無理なローンを組むことで自己破産を余儀なくされる人もいらっしゃるかと思います。やはり、堅実に資産の形成と投資を黄金法則に則って行うことが最も賢明な手段だと確信できるストーリーだと思います。

バビロンの黄金法則は現代にも通用する

 今の時代を生きる人間も、黄金法則をもとに一財を成すことができたそうです。ノッティンガム大学のアルフレッド H シュルーベリー氏がダバシアの記した黄金法則を基に富をなすことに成功したというのです。彼は借金に苦しんでおり、首が回らない状態だったそうです。黄金法則は今も変わらず資産を形成する手段であることが、時代を超えた実践により証明されたのです。

感想

 今も昔も通じるお金に関するリテラシーを学べる良書かと思います。アマゾンのレビューを拝見しますと、「当たり前のことしか書かれていない」という意見がありましたが、当たり前のことをしっかりやることが一番大切なことであるということを教えてくれる書籍でもあると思います。当たり前のことをしっかりやるというのは、すべての事柄に共通しており、例えばボディビルダーはあのムキムキの体になるためにコツコツ筋トレと栄養と睡眠をとってああなっているわけで、東大生は勉強をコツコツして大学に受かっているという当たり前の事実に鑑みると、古代から共通する”当たり前”の黄金法則を実行することがとても大切だと思います。一財を成すのに近道はないのだと改めて感じました。