思考の整理学 ~1983年に提唱なのになんと目新しい~ パート1 グライダー人間?

【今回ご紹介の本】外山滋比古著 「思考の整理学」 筑摩書房

 大学生協調べによると、この本は東大、京大の学生さんから大変支持されているようで、京大の生協においては一番読まれた本として見出しがありました。本の内容は、思考をどのように展開することが良いのか、著者の外山先生の考えをもとに論述されており、一般的な問題に対する捉え方や思考をまとめるための方法、新しいことを学ぶための手段などが述べられております。10ページ程度から成る短編がおよそ30編組み合わさって構築されています。どれも非常に鋭い視点から、出版されて30年余りが経過する現代でも通ずる普遍的な考えに基づいて思考の本質が述べられている書籍です。中でも面白いと思った項目をいくつかピックアップしてまいります。ご興味をお持ちの方はぜひ本書をご購読ください。

【グライダー】
 今どきの若い者は、、、「指示待ちだ」「自分の哲学を持たない」今のお年を召した方々は異口同音にこのようなことを口にしておられるようですが、外山先生は執筆時の1983年に同じようなことを仰っておられます。当時の若い学生(この時20代でしょうから、現代においては50過ぎの壮年の方)は「グライダーのように、自分の考えを持たず引っ張ってくれる人にそのまま従う学生が多く、また彼らが”優秀である”という評価を受けている」と。つまり、今も昔も若者は権威に迎合しており、時代にかかわらず日本人なら誰もが通ってきた道であると考察できます。ここで「グライダー人間」は典型的な指示待ち人間であり、指導者の考えに迎合すタイプの人を指します。かられは単独で問題解決する能力に乏しく、問題にぶつかった際に誰かに解決法を教えてもらわないと解決できないような人だそうです。
 一方で飛行機は自分のエンジンで空を自在に飛ぶ。つまり人間に例えるなら「飛行機人間」は自分の哲学、思考法を持ち、自らの判断で行動を起こすことができる人たちのことを指すわけです。
 悲しいことに今の日本社会(1983年当時から続く)の教育は飛行機人間を淘汰し、グライダーになるように求めます。授業に集中していなければ、無理に授業に参加させ、疑問に思ったことでも、教科書に書いていない部分は教えず教師の言うとおりに従うように徹底的に教えます。画一的な価値観が当たり前だった過去では、このようなグライダー養成教育で十分だったのでしょう。しかし価値観を自らで見つけて自らで行動することが求められる今の社会では、もはやグライダー人間はむしろ淘汰されるようになると著者は述べております。この点は、以前紹介した 藤原和博著 「本を読むものだけが手にするもの」 にも同様に、自らで独自の幸福論を追求する必要があるという言葉と共通していると思います。2019年において、外山先生の言葉を答え合わせすると、今の時代はまさに予想通り、大正解ではありませんか
 グライダーも飛行機も遠くから見れば、空を飛んでいるように見えるのだとか。同様に、社会において人間も、自らの意志で考え行動しているように見える秀才たちが、実は上司や先輩から言われたことをそつなくこなしているということが往々にしてあり、さらに悪いことに、社会や会社は、それらグライダー人間のことを自分の意志でものを考えて解決する、”できる人間”であるという点に大きな問題があると著者は述べておりました。
 興味深いことに、1983年の段階において、こういったグライダー人間は「いつかコンピューターにとってかわられる日が来る」と述べられており、シンギュラリティの到来をいち早く予言していたのです。

今回はここまでとします。次回は「思考をどのように醸造していくのか」という点に関しての記述をざっくりまとめてご紹介します。いろいろな試みをしているものの、なかなか芽が出ずに悩む方は参考になることが多いと思いますので、ぜひ次回もブログをご一読ください。一緒に勉強していきましょう。

【ここまでの感想】
 1983年に書かれていたとは考えられないくらい、今の若者が読んでも現在の社会が持つ問題点や現代人が持つ悩みを風刺しているように感じました。著者である外山先生が様々な無駄を経験し考察を繰り返した結果、それらの無駄が削ぎ落された思考の結晶が約220ページに凝集されています。シンギュラリティにも、自分自身で幸福論を追求する多様化する社会の到来にもこの時点で予想を立てていた外山先生の思考のエッセンスにわずか600円程度で触れられる良書だと思いました。興味のある方はぜひ本書のご一読をされてみてはいかがでしょうか?

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