「複業」で成功する ~副業?いいえ複業です~

【今回ご紹介の本】元榮太一郎 著 「『複業』で成功する」 新潮新書

 弁護士であり、弁護士ドットコムの代表取締役であり、参議院議員でもあるまさに3足の草鞋を履く元榮太一郎さんが本書の著者です。著者は今ブームになっている「副業」のさらに高い次元である「複業」のススメを本書を通して述べております。「複業」とは読んで字のごとくサブの仕事を持つのではなく本業を複数持つということであり、終身雇用制が当たり前ではなくなった現代をたくましく生き抜くための一つの保証制度として「複業」を進めます。
 本書は4章構成で、複業がなぜ大切なのか、どういうアクションをとるべきか、弁護士の視点から複業をする際の注意点(法に抵触する行為)、そして複業する際の大事な心構えがそれぞれの章で書かれています。それぞれざっくりとご紹介します。詳細を知りたい場合は、ぜひご一読ください。

第一章 あなたはいつ、今のキャリアからはみ出すべきか?
第一章は、「複業」がなぜ必要なのかを説明しています。「なるほど」と思った点は以下の通りです。
【個として通用する自分になる】
 日本の終身雇用は、有名な大企業でも保証できない時代になってしまっている。そのためリストラにあう、会社がつぶれるという憂き目にあった際にうろたえないよう、個として通用するスキルを身に付けておく必要があると著者は述べます。複業により、そのようなスキルが身に付くと説いています。
【本業を一つに絞らない】
 人間の寿命>組織の寿命となった今、一つの組織に依存しない生き方、キャリア形成をすることが必要である。そのため、パラレルキャリア(複業)が推奨されていました。
 副業解禁をした企業の中で例えばサイボウズなどは、離職率を4%にまで下げることに成功したそうです。
【週末の活動から始める 本業にプラスアルファで】
 本業と似た仕事で、分野を変えるなど、少し本業とずらした仕事を週末に実施していく。そして、稼げるようになったら思い切って軸足をこちらに置き換えることもおすすめ。また、NPO法人などに所属し、新たな出会いやつながりを作ることもよいとされている。
【時代を先取りする試みをする】
著者は「時代を先読みして仕掛けていくくらいでないとおおきな成功はできない。今、その時代が来ていると思って急いでそこに乗ろうとするのでは遅すぎる」と述べます。つまり良いビジネスのアイデアを思い付いたら即、行動に移すことを推奨しています。やりたいと思った時がはじめ時である。

第二章 あなたは企業すれば成功できるタイプか?
 著者が弁護士ドットコムを創業した時の振り返りで構成されています。企業の際に大切な心構えが記載されており、以下のようなことが書かれていました。
【ソフトランディングを心掛ける】

 著者は弁護士の仕事を辞め、弁護士ドットコムの立ち上げを行ったそうです。会社の立ち上げこそやったものの、赤字続きの状況が続き、いきなりの転身は無謀だったと振り返っています。そこで著者が推奨している方法としては、週末などの空いた時間を使ってビジネスを展開すること。うまくいけば本業にすればよいし、うまくいかなくても本業で稼ぐことができるからです。この手法をソフトランディング的な手法と定義し、こちらで複業を始めることが強く推奨されておりました。
【飲みにケーションは侮れない】
 著者自身の経験から、飲み会で出会う人間関係もバカにできないとのこと。事実、参議院議員になる際に、弁護士ドットコムの2代目社長を任せることになるになる内田陽介氏も飲み会で知り合ったとのこと。こういった何気ないつながりが思いがけず貴重な人脈を形成するのだとか。

第三章 こんな副業はアウト!
 この章では、副業を認めている企業でも、問題となる副業の取り組み方が記載されています。弁護士だからこそできる法律に基づく問題行動と、どの程度の罪に問われうるのかが紹介されていました。基本的には当たり前のことだと思いますが、具体的な記載内容を少しご紹介します。
【本業に支障をきたしてしまう】
 副業の取引先との連絡を業務時間にしてしまう。具体的には社内のパソコンでメールや自分の会社のウェブページを開いて副業関連の仕事をしてしまう。もしくはスマホを使って副業の仕事をしてしまう。これは「労働契約の不履行」にあたり、違約金を請求される可能性があるそうです。また、同様に副業で疲れて居眠りする場合もアウトです。
【本業で培った販路、顧客名簿を使用する】
 この行為は背任にあたる可能性があり、例えば本業と同様の業務を副業として立ち上げ、本業で勤めている会社と取引のある取引先に、その会社よりも有利な条件でものを売ったりシステムを提供した場合などは、会社から損害賠償を求められる可能性が高いとのこと。また、同様に本業で集めた顧客名簿を使って販売を行ってもアウトだそうです。本業で集めた名刺などは、あくまで会社のものとなるので、使用しない方が無難だそうです。

第四章 本気で複業を考えるあなたのためのチェックリスト
 この章では、複業の実践をどうするのか書かれています。また、起業する際に注意するべき財務状況や法律に関する事項が記載されています。具体的な実践法は本書にお任せするとして、「なるほど」と思った個所のご紹介です。
【複業を始める前に】
 三章で書かれている項目において、複業のどこに落とし穴があるのか、本業の会社から訴えられるリスクなどを熟知しておき、トラブルを未然に防ぐことが推奨されていました。
【個人ポートフォリオを作る】
 今までの業務経歴や実績をまとめ、自分の力や価値がどれだけあるのかを判断する指標を作る。このポートフォリオをもとに引き受ける仕事の単価を決めることができるようになるということだそうです。買いたたかれない、または自分自身を買いかぶって仕事が全く来ない状況を未然に防ぐことが狙いだそうです。
【人脈形成は損得勘定をむき出しにしない】
 人脈形成においては、ギブアンドテイクをあまりにも表に出さないことが重要で、「ギブアンドテイク」ではなく「ギブ・ビフォー・ユーゲット」の意識でいた方が良いとのことでした。何事もよい人間関係を作るには信頼を先に作ることが大切であるということだと思います。

【感想】
 本書は、現代の日本が抱える閉塞感とも相まって、非常に腑に落ちる内容でした。とりわけ「人間の寿命>組織の寿命」という点はまさにそうだと思いまして、今まで絶対に潰れないだろうといわれた会社がどんどんとリストラ、業務縮小、そして倒産をしている昨今、自分が勤めている会社がつぶれたときのことも考えて、いくつも稼ぐ手段を持っているべきだと思いました。弁護士の観点から、法律に基づいてどういうスタンスで副業を進めるのかという点をわかりやすく具体的に書かれておりましたので、今から副業、そして複業までを考えていらっしゃる方は一読の価値があるのではないかと思いました。
 今回はここまでです。次回も面白くためになる本をご紹介してまいります。一緒に勉強していきましょう。