本を読むものだけが手にするもの

【今回ご紹介の本】藤原和博著 「本を読むものだけが手にするもの」 日本実業出版社

 元リクルート社フェローが綴った「読書から得られた気付き」を人生訓を伴って説いた一冊です。読書をする方は、おそらく読書が好きで無意識のうちにやられているのでしょうが、その好きの積み重ねが人生を変えるかもしれないと示唆する本です。本好きには朗報な一冊です。

序章【社会構造、価値観の変化と読書】

 序章を読み始めてすぐ次の言葉が目に飛び込んできます。『これから先の日本では、身分や権力やお金による”階級社会”ではなく、「本を読む習慣がある人」と「そうでない人」に二分される”階層社会”がやってくるだろう』 これは、今の日本が直面する社会の変遷を先読みした、独自の幸福論の追求を読書を通じて推奨する著者の力強い言葉であると思います。
 20世紀の日本は働けば働くほど経済が豊かになっており、その中で醸成された価値観とは、「学生時代に勉強し、いい大学に入り、いい会社に入り、一生懸命に働いて、少なくとも課長まで昇進する」という画一的な価値観でした。しかし成熟した21世紀の日本社会においては「みんなと同じ」ではなく、独自に人生を切り開く「個人向けの幸福論」を見つける必要があるのです。
 著者の藤原さんはこれを「趣味としての読書」から「人生を切り開くための読書」と定義しています。今までは会社が人々に「つながり」を提供していた会社が、その機能を失い、メールやSNSなどの弱いつながりが社会とのつながりのすべてとなった現代において、自分の人生の幸福論を自分で定義していること、「個」として十分に幸せに生きていくことが重要であると説いています。

読書する者としない者の間で生じる階層社会】

 本書の引用から、2014年10月14日に放送されたテレビ番組クローズアップ現代において、本を月に一冊も読まない人が47.5%に達したと発表されたとのこと。こちらは5年前の話であり、出版社の経営不振に鑑みれば、読書をする人の割合はますます減少しているのではないかと考えられます。この状況が招く問題を著者は以下に示す実験を交えて浮き彫りにしていきます。

本を読む学生2人(一日の読書時間がそれぞれ2時間、30分)と本を読まない学生4人のグループに分け、「日本における英語の早期教育」に関する議論を1500字のレポートにまとめさせたところ、本を読まない学生、30分しか読まない学生に関してはインターネットで調べた記事をコピペし、その内容に修正を加えただけで終わった一方、読書時間が2時間の学生は、複数の書籍を調べ、多角的な情報と、自らの考察を交えたレポートを提出したそうです。

 つまり、読書により自らで考える力が身につき、より質の高い議論をできるようになっているということが示唆されます。これは以前、「上級国民/下級国民」の記事でも述べたような読書時間の差が 「教育の格差」 を生じさせているのではないかと考えられます。著者は「ネットの情報のみでは底の浅い思考しかできず、深く論理的な思考をするうえで、本は欠かせないものだと思う」と述べます。

第1章 【自らのレアリティを上げる読書習慣】

 時間は有限であり、時間を有効に使う人がすなわち稼ぐ人であると著者は述べます。個々人の時間の有効利用の度合いを推し量る指標として、「パチンコ、スマホゲームをするかしないか」を挙げます。それぞれ時間の浪費の代表的なものであって、パチンコをしないで、スマホゲームもせず、かつ読書をする人間は日本において10人に1人の割合なのだそうです。つまりそれだけで10%の希少価値を持つことができるわけです

【脳を育て、世の中を生きる力を身に付ける】

 テレビを見ている時と 読書をしているときでは、ヒトの脳の動きが異なるそうで、テレビを見ている場合は情報が「視覚野」と「聴覚野」にインプットされ→「言語野」に運ばれ、映像に意味を付けるそうです。この時、情報があまりにも多いため、それぞれの情報の表層のみを理解するにとどまるそうです。一方で本を読む場合、情報は「視覚野」→「言語野;ただし黙読をしている場合でも単語単語は音に変換され、それぞれの単語を言語野に保存されている情報と照合し分析する」という方向で流れていく。また、本で読んだ情報は、脳内で映像化され、これが「想像力」を生み出すということである。能動的に情報を取りに行くことで「想像力」を養い、それが適切な行動を先回りしてとるという世の中を生きる力につながるのです。

第2章 【読書で見方と味方を増やす】

 それぞれの本には、著者の経験、膨大な学習の結果と考察がちりばめられており、本書ではこれが「脳のかけら」と定義されています。脳のかけらには、著者が長い年月をかけて醸成したものの「見方」が含まれており、これを読書によって吸収することが可能であると述べております。さらに、この「見方」を増やす行為は、他者が持つ考えをよりよく吸収することを助け、円滑なコミュニケーションを増長し、結果として「味方」を増やす手助けになるということも述べられております。

第3章 【読書で人生の鳥観図を作る】

 読書によって、見方と味方を増やすことは、人生の鳥観図を作ることと似ているのだそうで、自分の人生を山にたとえた場合、日本人の多くは会社という山だけを登ろうとするでしょう。そうなると、会社で起こる困難やハードルだけを乗り越えることに腐心し、人生の後半は定年して下り坂を下りるような人生になると著者は述べます。一方で、その山をたくさん作り、人生のステージにおいて別の山に乗り換えるという選択が、人生後半の下り坂を上り坂に変えるのだといいます。そのためには社会人の間にいくつもの山の裾野をつくならくてはならないわけですが、見方と味方を増やしておけば、自ずとコミュニティは広がり、様々な山の裾野をこしらえることができるとのことです。5~10年この山の裾野から徐々に登っていけば、この道での第一人者になることができ、人生の転機において山の乗り換えができる効率の良い手段であるということを著者は述べています。

第4章 【読書で育む情報編集能力】

 著者は、成長社会において必要とされる能力が「情報処理力」であるのに対し、成熟した社会において必要とされるのが「情報編集力」であると著者は説いています。つまり 今までは テストで正解を導きだす能力(ジグソーパズル型思考)が必要であったのに対し、今の社会では最適解を組み立てていく思考法(レゴ型思考)が必要になってくるということです。このレゴ型思考をかなえるためには、多くの人間とコミュニケーションをとり、やりたいことをプレゼンし、他者を納得させる必要があるとのこと。この能力を育むことこそが、読書であると著者は説きます。
 相手が話すことを理解し、その素晴らしさを納得し、相手をリスペクトすることは、相手の話す内容に対してある程度の知識が不可欠です。その知識は、読書が育みます。コミュニケーションにおいて聞くだけでは不足であり、自分の知識のアウトプットも不可欠です。読書による多角的な視点、および仮説の提唱をする能力を鍛えることでプレゼン能力も同様に円熟していくと著者は述べます。
 読書によって鍛えたコミュニケーション能力をもとに情報編集を有効に行うことこそが、今の成熟した社会を生き抜く必須のスキルであるのです。

第5章 【読書習慣を身に付けるには?】

 読書は人生を切り開く活動であることは、この本を通してよくわかります。しかし、その習慣がないという方もいらっしゃるでしょうし、必ずしも読書が好きでもないでしょう。そんな人はどうすればよいのか?著者曰く、以下の2つに集約されるようです。

  1. モチベーションを挙げるため、本に期待しすぎないこと。
    著者曰く、「これは!」と思ういい本は10冊に1冊くらいの確立でしか出会わないのだとか。いい本に必ず出合えると思って、一冊目から過度な期待を持つと、いざ面白くない本を手に取ってしまったときにがっかりしてしまいます。今の本はイマイチだけど、次はきっといい本に出合えると思いながら次々と呼んでいきましょう。
  2. 読書の習慣が身に付くまで、半ば強制的に読書を続ける。
    朝の起き抜けに読む、帰宅後に必ず本を開くなど、自分のライフスタイルの中のどこかで読書をする時間を割り込むことで、読書をしないと落ち着かなくなり、自然に読書をするようになれるかもしれません。
  3. 読書好きと一緒に過ごす
    本書には次のように書いてあります。“教育とは、伝染、感染なのだ” “よく研究支社や作家の子供が本好きになりやすいというが、それは家に本がたくさんあるからではない。小さいころから、親が本を読む姿を見ているからだ。子供にとって最高の教材は、いつも大人の学ぶ姿なのである。” このように、子供に影響があるのであれば、大人に対しても、本を読む人間の学ぶオーラは必ず伝染し、読書をしたくなるはずです。

【感想】

 読書好きの人間からすると、「あるある」という考え方が目白押しで、読書をすることによってクリティカルシンキングができるようになったな。という実感がわきました。知識の吸収を通して、やはり円滑なコミュニケーションと、会話の厚みが身に付くという点も非常に共感が出来ました。
 かくゆう私は、学生の頃にある勘違いをしておりました。研究室に多くの外国人がおり、ラボで話す機会が良くあったのですが、なかなかお喋りが続かないことが悩みでした。その悩みを解決すべく英会話教室に入り、英語をそれなりに勉強したのですが、結局しゃべれず。ふと考えると、話す内容が無いということ。相手の会話に相槌が打てるほどの知識(相手の会話の内容に対する深い知識と、独自の考え)が無いことが主な原因であると後々わかりました。
 本気で読書をし始めたのが28歳頃からのこと。本書で紹介されている能力に関しては、研究に関するものばかり。会話ができる方々も内容も非常に少なかったと感じていました。
 今は、読書を通じて知識を広く持つことができ、様々な業界、人種、年齢の方々とストレスなく、円滑なコミュニケーションをとることができていると感じますし、多くの趣味への挑戦、コミュニティの拡大を図ることができております
 読書習慣は、人生を切り開く習慣であると思います。一念発起で何かを始めるのもいいですが、まずは読書という手軽な手段で新しい自分を見つけてみてはいかがでしょうか?
 一緒に勉強していきましょう!

本を読むものだけが手にするもの” への2件のフィードバック

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